基礎知識集
世界モデル
01定義
現実世界での試行錯誤(ロボットや自動運転車にとっては遅く、リスクも伴う)だけに頼るのではなく、エージェントはまず世界モデルの中で行動の結果を「想像」してから、実機に触れる前に計画を立てたり行動を調整したりできます。
02仕組み
03学習のさせ方
世界モデルの多くは、大量の映像やセンサーデータを使い、「直近の過去から、次に何が起きるかを予測する」という自己教師あり学習で訓練されます。1つの系統は、次の映像フレームを1ピクセルずつ、自己回帰的に生成する方式で、Genie 3やGAIA-1はいずれもこの方式です。より新しい系統として、Meta社のV-JEPA 2に代表されるアプローチがあります。こちらはピクセルの生成を一切行わず、圧縮された抽象的な「埋め込み(エンベディング)」空間で次の状態を予測します。計算コストが低いだけでなく、開発元は「行動計画に必要な物理的な帰結の表現としては、こちらの方が本質に近い」と主張しています。
04代表的な事例
Cosmos
「フィジカルAI」という言葉を広めたのと同じCES 2025の基調講演で発表された世界基盤モデルのプラットフォームです。ロボットや自律走行車の学習向けに、物理法則に基づいたシミュレーション映像を生成します。Figure AI・Skild AI・Agility Roboticsなど、企業・製品DBにも掲載されている企業が既に採用しています。
Genie 3
1つのテキストプロンプトから、リアルタイムで探索可能なインタラクティブ環境を生成する汎用の基盤世界モデルです。毎秒24フレームで動作し、数分間一貫性を保てます。前身のGenie 2から大きく進化しました。
V-JEPA 2
100万時間を超える映像で学習された世界モデルです。映像のピクセル自体は一切生成せず、ロボットのゼロショットでの計画・操作に使われます。
Google DeepMind公式の映像。Genie 3が1つのテキストプロンプトから、探索可能なインタラクティブ環境をリアルタイムで生成する様子です。学習プロセスの説明ではなく、世界モデルが実際に何を生み出すのかを直接確認できます。
05重要な理由
これが重要なのは、現実世界での試行錯誤がスケールしないからです。ロボットは、壊れやすい物を何千回も落として学習するわけにはいきません。世界モデルがあれば、その試行錯誤を圧縮された安全な形で内部的に実行し、そこで得た知見を適用できます。
世界モデルは研究上の興味にとどまりません。Hugging Faceのオープンソースプロジェクト「LeRobot」は、2026年7月のv0.6.0で独自の世界モデルポリシーを3種類(VLA-JEPA・LingBot-VA・FastWAM)追加し、ロボットのポリシーが行動前に内部で次の動きを予測できるようにしました。プロジェクト全体の歩みの中でこれがどう位置づけられるかは、LeRobotの歴史で解説しています。
06よくある質問(FAQ)
世界モデルと、(ゲームなどの)手作りの物理エンジンは何が違うのでしょうか?
物理エンジンは、重力・衝突・摩擦係数といった明示的な、人間が手で書いたルールをコード化したものです。一方世界モデルはデータから学習されます。手でコード化するのが非現実的な、雑然とした現実世界のダイナミクスを捉えられる代わりに、厳密なシミュレーションではなく近似にとどまります。
世界モデルは自動運転だけで使われるのでしょうか?
いいえ。汎用のGenie 3やV-JEPA 2の例が示す通り、ロボティクスやヒューマノイドの計画など幅広く使われます。GAIA-1は自動運転に特化した一例であって、唯一の用途ではありません。
世界モデルは映像を生成しないと役に立たないのでしょうか?
いいえ。映像を生成すること(Genie 3やGAIA-1のように)は、学習環境を作ったり、人間がモデルの予測を目視で確認したりするのには有用ですが、V-JEPA 2が示す通り、ピクセルを一切介さず抽象的な埋め込み空間で将来の状態を予測するだけでも、計画・制御には十分であり、計算コストも低く済みます。
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