01はじめに
国際ロボット連盟(IFR)は、産業用ロボットを6つの機構タイプに分類しています。そのうちの1つ、極座標(ポーラー)は最初期の産業用ロボットの構造で、1961年の初代Unimateもこの構造でした。残る5タイプは、その後それぞれ動作範囲・速度・精度のトレードオフに特化していきました。ここでは、それぞれの構造と、どこで使われているかをまとめます。
026つの機構タイプ
垂直多関節
3つ以上の回転関節を直列に連ねた、人間の腕に似た動きをする構造で、動作範囲が最も大きく柔軟です。通常は6軸。溶接・搬送・一般的な組立で主流の構成です。
SCARA(水平多関節)
2つの水平な回転関節に、垂直方向のストロークを加えた構造で、通常は4軸です。水平方向には高い剛性を持つ一方、垂直方向にはしなやかで、プリント基板への部品実装のような、高速で反復的な配置作業に向いています。
直交座標(ガントリー)
回転ではなくX/Y/Zの3つの直動軸を組み合わせた構造です。機構がシンプルで、非常に大きな動作範囲までスケールでき、重い荷重も扱えます。広い範囲の搬送やパレタイジングでよく使われます。
円筒座標
回転するベース関節に、垂直方向・半径方向の直動関節を組み合わせ、円筒形の動作範囲を描く構造です。同じ到達距離であれば、多関節アームより設置面積を抑えられます。
パラレルリンク(デルタ)
複数の軽量なアームが、平行四辺形のリンク機構を介して固定ベースと共通のエンドエフェクタープラットフォームを結ぶ構造です。モーターが可動部から切り離されているため、非常に高い加速度を実現できます。例えばABBのIRB 360は、軽量な荷重で毎分最大150ピックの性能を謳っています。
極座標(ポーラー)
回転するベース関節と肩関節に、伸縮する直動アームを組み合わせ、球形の動作範囲を描く構造です。1961年、世界初の量産産業用ロボットとして稼働したUnimateがこの構造でした。

パレタイジング用セルに組み込まれたSCARAロボット。2つの水平回転関節と垂直方向のストローク動作という構造は、1978年に牧野洋教授の研究チームが三共製作所と開発した設計です。
写真: Hirata Robotics GmbH、CC BY-SA 3.0 DE、Wikimedia Commons経由
2010年、ミュンヘンの展示会「Automatica」に出展されたTOSY製デルタロボット。3本のパラレルリンクアームとロボット上部に集約されたモーター配置により、通常の6軸アームでは実現できない高速ピッキングが可能になります。
写真: Humanrobo、CC BY-SA 3.0、Wikimedia Commons経由ABB Robotics公式のデモ映像。パラレルリンク(デルタ)ロボット「IRB 365 FlexPicker」が、軽量な製品を非常に高速でピッキング・向き変更・梱包する様子——上記で説明した加速性能の優位性を、実際の動きで確認できます。
03作業内容から選ぶ、簡易ガイド
あくまで出発点です(実際の現場では複数の機構を組み合わせることも多く、厳密なルールではありません)が、作業内容から見ると、まず候補となる機構は次のように絞り込めます。
- 自動車ボディパネルの溶接垂直多関節
- プリント基板への部品実装SCARA
- 広い範囲での大型・重量物の搬送直交座標(ガントリー)
- 設置面積が限られたコンパクトなセルへの導入円筒座標
- 軽量・小型の部品を非常に高速でピッキングパラレルリンク(デルタ)
04メーカーがトレードオフをどう説明しているか
この6タイプに厳密な優劣はなく、それぞれが動作範囲の形・速度・可搬質量と、設置面積・コストをトレードオフしています。現場の設計は通常、作業内容(自動車のドアを溶接するのか、コンベア上の小さな部品を高速でピックするのか)と使える設置スペースから出発し、両方に合う機構を選ぶ、という流れになります。
05横断的なカテゴリ:協働ロボット
上記6タイプのいずれも、協働ロボット(cobot)として設計・安全認証を取得できます。「協働」はこれらの機構タイプとは別軸の、安全性・導入場面に関する分類です。協働ロボットでは、ロボットを「協働」たらしめる条件と、この記事で扱う機構タイプとの違いを解説しています。
06よくある質問(FAQ)
Q.SCARAと垂直多関節の違いは、具体的に何ですか?
A.SCARAの2つの主要関節はいずれも垂直軸まわりに回転し、アームは水平方向には剛性が高く、垂直方向にはしなやかに動きます——高速・平面的・反復的な配置作業に向いています。垂直多関節ロボットの関節は、3次元空間内でほぼあらゆる方向にツールを向けられる一方、単純で反復的な平面上の動作では、一般にSCARAより速度で劣ります。
Q.なぜパラレルリンク(デルタ)ロボットは他の構造よりずっと高速なのですか?
A.モーターが可動アームに乗らず、ベース側に固定されたままだからです。アーム自体が非常に軽量になるため、1サイクルごとに加減速させる質量が大幅に少なくなり、軽量な荷重であれば非常に高いピック速度を実現できます。
Q.極座標(ポーラー)の構造は、今も使われていますか?
A.IFRの分類には今も含まれていますが、1961年の初代Unimateが担っていた汎用的な搬送・工作機械へのワーク供給といった役割は、現在の各社ラインアップでは主に垂直多関節や直交座標のロボットがカバーしています。今の販売台数というより、最初の産業用ロボットの構造だったという歴史的な意義から、知っておく価値があります。
Q.「ピックアンドプレースロボット」とは、どの機構タイプを指しますか?
A.これは機構タイプではなく、作業内容を指す呼び方です。非常に高速・軽量なピック&プレースの定番はデルタロボットですが、SCARAや直交座標のロボットも、異なる速度・可搬質量の範囲で同じ基本作業を行います。ある「ピックアンドプレースロボット」が実際にどの機構を使っているかは、対象物の重さと必要なサイクルタイム次第です。
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